いやもう、読み始めてから「ズドン!」と胸に響いて「ガタン…」と床に倒れそうになるほど斬新な体験でした。生殖記(Kindle版)は、通常の“物語を読む”という感覚を軽く超えてきます。
まず驚くのは語り手。主人公の“アレ”(ええ、あの…)が語るんですよ。そういう小説、今まで読んだことありますか?私はありませんでした。最初は「うわっ、何これ!?」って顔をしかめましたが、気づいたらページをめくる手が止まらなくなっていました。
この作品、著者 朝井リョウ さんが「人間の生殖本能」や「社会の構造」「所属/非所属」というテーマに大胆に切り込んでいて、でもそれを堅苦しく語るのではなく、ユーモアとか皮肉を「クスッ」と笑えるレベルで織り交ぜつつ進行します。だから、読み終えた後に得られるのは“深く考えさせられる感”と“読んで良かった満足感”です。
物語の舞台は、とある家電メーカーの総務部勤務・尚成という男。しかし、ただのサラリーマン話ではありません。彼と“アレ”が人生を共にし、社会の枠に収まらないモヤモヤを抱えながら生きる姿が鮮烈に描かれています。言わば、私たちが普段「なんだか違う」「しっくりこない」と感じながらも飲み込んできた違和感に、鮮やかに名前をつけてくれるような作品なのです。さながら、霧の中で迷子になっていた自分に「ここですよ」とランプを灯してくれたような。
そんな中でも「笑えるポイント」もきっちりあって、例えば語り手が自ら「俺はこのためにここにいるのか…」という感じで自虐的に呟いたり、社会の“当たり前”に対して軽く「えーっと、お前…それ普通??」とツッコミを入れたり。私、読みながら何度も思わず吹き出しました。図らずも通勤電車の中で吹き出してしまい、自分が思ってた以上に読書中の顔が“ニヤつき顔”になってたのには気まずくてタジタジでしたね(笑)。
この本を読むことで得られるもの、それは「自分の存在が社会のレールにぴったり当てはまらないかもしれない」という不安を、少し軽くできること。そして「それでも生きていいんだ」「そのままでいいんだ」という安心感です。言い方を変えれば、自分が“期待される役割”から外れた枝にいながらも、自分なりの緑を茂らせていいんだよ、と教えてくれます。
もちろん全く難しいだけの本ではありません。構成や語り口がユニークすぎて「うーん、ここちょっと読みにくい…」と思う箇所も正直ありました。ただ、「読みづらさ=挑戦」のような体験が逆に心に刺さるのも確かで、「読んで終わり」じゃなくて読んだ後も自分の中でゾワゾワと残るものがある。そこがこの作品の凄さです。
私のように、「周りと同じ流れに乗れない気がする」「何となく違和感を抱えているけど言葉にできない」という人には、ぜひ手に取ってほしい1冊です。読後には、ちょっとだけ“自分らしく”居やすくなる気がしました。だからこそ、この本を手に取る価値があります。
夜のリビングでコーヒー片手にじっくり読んでみてください。気づいたら「なんだこれ、もう1回読み直したい!」って思っている自分がいるはずです。

