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さわらないで小手指くん

【漫画感想】触れたい、でも触れられない。もどかしくて愛おしい『さわらないで小手指くん』の沼へようこそ

もし、触れるだけで相手の「心の声」が聞こえてしまったら、あなたならどうしますか?

そんな、誰もが一度は夢想する(かもしれない)特殊能力を持ってしまったがために、人との接触を極度に恐れる青年がいます。今回ご紹介したいマンガ、『さわらないで小手指くん』の主人公、小手指くんです。

彼の日常は、まるで薄氷の上を歩くかのよう。満員電車は地獄そのもの。人の肌に触れれば、思考の濁流が脳内に流れ込んでくる。賞賛、嫉妬、悪意、建前…。望まない本音の洪水から自分を守るため、彼は夏でも長袖に手袋、そしてヘッドホンで心を閉ざして生きています。

そんな彼の前に、一人の先輩が現れます。

大学のキャンパスで偶然ぶつかってしまった、ミステリアスな雰囲気の先輩。パニックに陥る小手指くんでしたが、不思議なことに、彼女に触れても「心の声」が全く聞こえてこないのです。彼にとっての世界で唯一の、静寂。ノイズのない、ただ温かいだけの接触。それは、彼にとってどれほどの衝撃だったでしょうか。

この出会いが、心を閉ざしていた小手指くんの世界を少しずつ変えていくことになります。

魅力的なキャラクターたち

小手指遥(こてさし はるか)
本作の主人公。触れた人の心の声が聞こえる能力のせいで、極度の接触恐怖症に。臆病で不器用ですが、根はとても優しく、他人の痛みに敏感な青年です。彼の葛藤に「わかる…」と共感してしまう人も多いはず。

伊吹冬実(いぶき ふゆみ)
小手指くんの先輩。クールで何を考えているか分からない、ミステリアスな女性。なぜか彼女だけは心の声が聞こえず、小手指くんにとって唯一の安息の場所となります。時折見せる不器用な優しさがたまりません。

「知ること」と「知らないこと」の尊さ

私がこの作品にどっぷりハマってしまったのは、単なる特殊能力ラブコメではない、そのテーマの深さです。

「人の本音が分かれば、人間関係は楽になるはず」。そう思っていたのに、小手指くんを見ていると、その考えがいかに浅はかだったかを思い知らされます。むしろ、本音を知りすぎてしまうことで、彼は人を信じられなくなっているのです。

もし、あなたの大切な人の心の声が聞こえてしまったら? 表面上は笑顔でも、心の中では不安や不満を抱えているかもしれません。それを知ってしまった時、あなたは今まで通りその人に接することができるでしょうか。

私たちは、相手の全てを知ることはできません。だからこそ、言葉を尽くし、表情を読み取り、想像力を働かせて、必死に相手を理解しようとします。その不便で、もどかしいコミュニケーションこそが、人間関係の尊さなのかもしれない。この漫画は、そんな当たり前のようで忘れがちな大切なことに気づかせてくれます。

触れたい、でも触れられない。知りたい、でも知りたくない――。

そんなジレンマの中で、少しずつ距離を縮めていく二人の姿は、もどかしくて、たまらなく愛おしい。あなたもきっと、この二人の恋の行方から目が離せなくなるはずです。ぜひ一度、手に取ってみてください。

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