野原ひろし 昼メシの流儀
【書評】いつもの昼休みが、最高のエンタメに変わる!『野原ひろし 昼メシの流儀』が熱すぎる
皆さん、おなじみ『クレヨンしんちゃん』の父ちゃん、野原ひろし。マイホームのために32年ローンを組み、足が臭いと家族に言われながらも、一家の大黒柱として毎日頑張るごく普通のサラリーマン。…しかし、彼には我々の知らない、もう一つの顔がありました。それは、平日の昼メシに己の美学と情熱のすべてを懸ける、孤高のグルメ探求者の姿です。
今回ご紹介するのは、そんな野原ひろしの「食」への真剣勝負を描いたスピンオフ作品、『野原ひろし 昼メシの流儀』です。
腹が、減った…! そこから始まる最高のドラマ
物語の幕開けは、いつもと同じ、ありふれた平日の昼休み。営業の外回りを終えたひろしは、強烈な空腹感に襲われます。時計は正午を少し回ったところ。さあ、ここからがひろしの、ひろしによる、ひろしのための聖戦(ランチタイム)の始まりです。
彼の脳内は、瞬時に「最高の昼メシ」を見つけ出すための作戦司令室へと変わります。「今日の気分は、ガツンとくる中華か? それとも、優しく染み渡る和定食か…いや、待てよ、あの角を曲がった先にある洋食屋のナポリタンも捨てがたい…!」
ただ空腹を満たすためだけにお店に入るなんて、彼の流儀に反します。店構え、のれんのくたびれ具合、中から漏れ伝わる活気、そして食欲を刺激する香り。五感のすべてを研ぎ澄まし、街に潜む名店を鋭く見抜こうとするその姿は、まるで獲物を狩るハンターのよう。限られた時間とお小遣いの中で、あなたならどんな一食を選びますか? ひろしの真剣な葛藤を見ていると、思わず自分自身のランチタイムと重ね合わせてしまいます。
個性豊かなキャラクターたち
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野原ひろし
本作の主人公。もちろん、あのひろしです。しかし、家族の前で見せる顔とは違い、昼メシに対しては一切の妥協を許さない熱い男。彼の心の声(モノローグ)で綴られる、メニュー選びの葛藤や、料理を口にした瞬間の感動の叫びは、読んでいるこちらまでお腹を空かせ、喉を鳴らさせてくれます。 -
川口さん
ひろしの会社の後輩。ひろしほどのこだわりはないものの、彼の昼メシ探訪に付き合わされたり、時には新たな店の情報を持ち込んだりする良き相棒。彼の存在が、ひろしの「流儀」をより一層際立たせています。
このマンガが、ただのグルメマンガで終わらない理由
僕がこの作品にどっぷりハマってしまったのは、単においしそうな料理が出てくるからだけではありません。ひろしが選ぶ店は、高級店ではなく、ごく普通の街の中華屋さんや定食屋さんばかり。そこで働く人々の人情や、店に流れる空気感までもが丁寧に描かれていて、読後には心がじんわりと温かくなるのです。
メニュー表を前にして、「定番」で安定を取るか、「日替わり」で冒険に出るか。究極の選択を迫られたとき、あなたの心の声は何と叫ぶでしょうか? このマンガを読んでいると、そんな日常のささやかな選択がいかにドラマチックで、楽しいものであるかを再発見させてくれます。
正直、これを読んでからというもの、私自身の昼食の店選びが格段に楽しくなりました。今まで気にも留めなかった路地裏の定食屋が、急に輝いて見えるのですから不思議なものです。
『野原ひろし 昼メシの流儀』は、明日からのランチタイムを、ほんの少しだけ特別な時間に変えてくれる魔法のような一冊。今日の昼、何を食べようか迷っているあなたにこそ、ぜひ手に取ってほしい作品です。
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