ホリミヤ
【ネタバレなし】『堀さんと宮村くん』の魅力|誰にも見せない「本当の顔」、知られたらどうする?
学校のクラスメイトや職場の人に見せている「ソトの顔」と、家族や本当に親しい友人にしか見せない「ウチの顔」。誰にでも、そんなちょっとしたギャリー(ギャップ)ってありますよね。今回ご紹介するマンガ『堀さんと宮村くん』は、そんな誰もが持つ「秘密の顔」から始まる、甘くて、切なくて、とてつもなく愛おしい物語です。
完璧な日常に飛び込んできた「秘密」
物語の主人公の一人、堀京子(ほり きょうこ)。彼女は学校では、才色兼備でいつも明るく、クラスの中心にいる人気者。誰もが憧れる、完璧な女子高生です。
しかし、そんな彼女にも誰にも見せていない「顔」がありました。放課後、きらびやかな友人たちとの誘いを断り、急いで家に帰る彼女。そこにあるのは、化粧も落とし、楽なジャージ姿で幼い弟の面倒を見ながら、忙しい両親に代わって家事をこなす、まるで主婦のような日常でした。学校での華やかな姿とはかけ離れた、地味で家庭的な姿。それが彼女の「秘密」であり、守りたい日常でした。
そんな彼女の完璧に分け隔てられた世界に、ある日、思いがけない訪問者が現れます。怪我をした弟を送ってきてくれたのは、耳にたくさんのピアスを開け、派手な格好をした見知らぬ男の子。一瞬、警戒する堀さんでしたが、彼が口にしたのは、弟の名前と、そして自分の名前――「堀さん」。
その声で、堀さんは気づきます。目の前にいるこの人物こそ、自分のクラスにいる、あの根暗で、オタクっぽくて、誰とも話さない影の薄い男子――宮村伊澄(みやむら いずみ)だということに。
学校では想像もつかない彼の姿と、彼に知られてしまった自分のすっぴんジャージ姿。クラスで一番遠い存在だと思っていた二人の「秘密」が、この日、図らずも交差してしまったのです。
もし、あなたがひた隠しにしてきた自分の素の姿を、一番知られたくないクラスメイトに偶然見られてしまったら、どうしますか? 明日からどんな顔をして学校へ行きますか?
ギャップが愛おしい、二人の主人公
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堀 京子(ほり きょうこ)
学校では高嶺の花。でも本当は、面倒見が良くてちょっぴり強気な家庭的な女の子。完璧な仮面の下に隠された、素の彼女の可愛らしさにどんどん惹きつけられます。 -
宮村 伊澄(みやむら いずみ)
学校では無口でミステリアスな暗い男子。でも本当は、ピアスにタトゥー(!)という派手な見た目とは裏腹に、おっとりしていて優しい天然な男の子。彼の魅力は、なんといってもその予測不能なギャップにあります。
甘酸っぱいだけじゃない、心の距離に胸が鳴る
この物語のすごいところは、単なる「秘密の共有」から始まるラブコメで終わらないことです。最初はぎこちなかった二人が、お互いの「秘密」を守る共犯者として少しずつ言葉を交わすうち、学校の「ソトの顔」でも、放課後の「ウチの顔」でもない、本当の自分をさらけ出せる唯一の相手になっていく。その過程が、もう、たまらなくリアルで、胸が締め付けられるほど愛おしいんです。
自分のコンプレックスや弱さも、相手にとっては特別な個性に見える。自分の「本当の姿」を丸ごと受け入れてくれる人が現れたら、世界はいったいどんな風に見えるでしょう?
『堀さんと宮村くん』は、そんな温かい発見と、思わず顔がにやけてしまうような甘酸っぱい青春が詰まった作品です。二人の関係だけでなく、彼らを取り巻く友人たちのドラマも丁寧に描かれており、読めばきっとあなたのお気に入りのキャラクターが見つかるはず。
まだこのドキドキとキュンキュンを知らない方は、ぜひこの世界に飛び込んでみてください。きっと、読み終えた後、誰かと自分の「秘密」を共有したくなるはずです。